梅の追熟はエチレンガスの働き – クリマクテリック型果実

梅の実も生きているんだなぁ~♪と実感するのが、
梅の蒸散,そして呼吸と追熟。

果実の成熟には、
見た目:色が変わる(梅の場合は、緑→黄緑→黄)
果肉:柔らかくなる(軟化)
香り:独特の香りが出てくる
という特徴がありますが、これらの現象を「追熟」と呼んでいます。

この追熟という現象は,果実が完熟 していなくても(未熟果)、
ある一定のラインまで成長していれば起こる現象で、
この追熟 によって、過熟 に向かい,そして腐敗に向かいます。

梅のほか,同じバラ科のリンゴなども、この追熟が始まると,
呼吸量が急上昇(クリマクテリック・ライズ)し,酸素を吸って
二酸化炭素を放出。実の中にある有機酸をエネルギーにして、
どんどん熟していきます。

このように、追熟の際「呼吸が活発になる果実」は、
クリマクテリック型果実と呼ばれています。

そして、この「熟すの開始!」のゴーサインを出すのが,
成熟ホルモン・老化ホルモンの別名をもつ、植物ホルモン「エチレン」。
果実は,収穫された後も呼吸していますが、エチレンが作用すると、
一気に呼吸量を増やし,追熟に向かいます。

よく、硬いキウィフルーツを柔らかく熟させるのに,
「リンゴと一緒にビニール袋に入れると良いよ」というのも、
リンゴが放出するエチレンの働きに期待したものです。

梅は、誰に教わるでも無く,自分でエチレンを出して追熟しますが、
エチレンを作りにくい品種のキウィ(ヘイワードなど)の場合は,
バナナ同様に,職人芸(エチレン処理)で追熟させています。

ちなみに、追熟には程よい温度が必要。
20度~30度の環境で,酸素が多いところにあると、
この働き(追熟)は活発になります。

反対に,20度以下のところや,二酸化炭素の多いところにあると、
この働きは穏やか~抑制されますが、この抑制が梅にとって休眠になるのか、
それとも低温障害になるかといったら、私は経験上後者だと思いますので,
青梅を冷蔵庫に入れる事は基本的にお勧めしていません。

自然の流れに沿って,それに合わせて自然の恵みをいただくという
基本の部分を人間寄りに考えてしまうと,失敗するのが梅仕事。

ちょっとした事ですが,梅は生きていますので、こうした事も
考えてあげると,より良い梅をおいしくいただく事が出来ると思います(^-^)

ちなみに、このクリマクテリック型果実。

「クリマクテリック(Climacteric)」は、人間の場合は
「老化(主に更年期)」を表す単語に使われていますが、植物の場合
「成熟」と訳されています。

でも、一括りに「成熟」としてしまうと、
おいしくいただくタイミングを逃してしまうかもしれませんね。

例えば,リンゴの場合は、追熟によって、
「サクサクではなくスカスカ」になるわけですから、
「おいしくない = 老化」現象だと思います。

これとは正反対で,バナナの場合は,
「真っ青で固いバナナが、黄色く熟し柔らかく」なる、
「おいしくなる = 成熟)」現象。

リンゴは持ち味の「パリっとした食感」の方がおいしく頂けますし,
バナナは追熟してデンプンがどんどん糖化した方が,おいしくいただけます。

ちなみに梅の場合の追熟は、「老化」or「成熟」
どちらの方が合っているかなぁ?と考えてみましたが、

完熟南高梅を生で食べる場合,収穫後少しでも早い方が
実の張りが良く,おいしいことから考えると、果実としては
おそらくバラ科の仲間,リンゴと同じ「老化状態」だと思います。


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